調査・編集 田中川の生き物調査隊
源流の三重県鈴鹿市三宅町の山間から徳居町を経て、津市河芸町の三行・久知野・上野・東千里の各地区を流れ、若者や家族連れでにぎわう「マリーナ河芸」のある河口から伊勢湾へと注ぐ田中川。
田中川は源流まで遡っても清流と言える流れはなく、濁りの多い川である。
源流部の山は土砂が削られ、多種類の帰化植物が姿を見せてはいるものの、ササユリ、シライトソウ、リンドウも自生し、サワガニ、イモリ、カスミサンショウウオも生息している。
洪水の再発を恐れてコンクリートを多用した護岸が源流近くまで続くも、ゆるやかな流れが中流域に土砂を堆積し、ヨシやガマ、マコモの群生をみせる。
堤防から見た干潟の中央部 白い花はトベラに巻きついたセンニンソウ。澪筋が銀色に輝く。
河口の突堤は長く海に突き出し、釣り人が絶えない。コンクリートブロックにはマガキが幾重にも折り重なり、まるで岩礁の様相、ここに住む生き物はまさに磯のものである。
河口右岸にはヨシの群落が広がる潟湖干潟が形成されていて、海水と淡水が混ざる汽水域特有の生き物が見られる。中でも塩生植物のハマサジとハママツナの群落は全国的にも誇るべき大きさである。この干潟にはゴカイ類やコメツキガニ、ニホンスナモグリなどの底生生物も多く、野鳥のエサ場ともなり、釣り餌としても採取されている。干潟の堤防際には、自生と思われるハマボウの古木が育ち、7月中旬が花の見ごろ。周辺には絶滅が心配される生き物が幾種類も認められる。
砂浜は自然海岸で、海浜性の生物が豊富に見られ、シロチドリの繁殖地であり、アカウミガメの産卵地でもあるが、近年、車両の乗り入れが見られる。
平成12年には岐阜マリンスポーツセンターがオープン。環境教育、総合学習の場として、県内外の小中高校生が干潟や海岸の自然観察会を行う機会が増えている。
また、大学生や研究者たちも調査研究のフィールドとして、この地を訪れている。
なお、この地域(「別保の浦」)には鎌倉時代中期の説話集「古今著聞集」による人魚伝説が残されている。